
第10回 クラン戦術 守備の基本

前回まではクランの設立、練習方法など、どちらかといえばクラン戦以外のことについて解説してきた。クランがある種の共同体である以上、「内政」が欠かせないのは言うまでもないことだが、内政のことばかり解説していては、戦闘をこよなく愛する読者の皆様は退屈してしまうことだろう。
ということで、今回から数回に渡り、クラン戦における戦術のポイントについて解説していくことにしよう。クラン戦術は、大きく分けて「守備」、「攻撃」、「コミュニケーション」の3つのパートからなる。
そこでまず、クラン戦術の基本的な視点について押さえたのち、今回はクラン戦における守備の基本について解説していく。
パブリックサーバーとクラン戦の違い。戦術の基本視点
本連載の前半部でお伝えしたパグリックサーバー(野鯖)での戦術とクラン戦での戦術とはどこが違うのだろうか。ここではクラン戦術の基本視点について簡単に言及しておく。今後、数回にわたるクラン戦術についての解説を読むときにはこの視点を常に頭に置いておいて欲しい。
視点1.クラン戦は人数が少ない。「命、大事に!」
パブリックサーバーで1チームあたりのメンバーの数は10人から20人前後が一般的であるのに対し、クラン戦では1チームのメンバー数は5人前後と少ないことが多い。したがって、クラン戦では、メンバー1人あたりが果たす役割は大きく、その命は重い。無駄死には極力避けるべきだ。
視点2.クラン戦は音声チャットが使える。「情報を制す者が試合を制す!」
パブリックサーバーでのコミュニケーション手段はテキストチャットやラジオボイスがメインであるのに対し、クラン戦ではTeamSpeak2などの音声チャットが主流である。肉声で会話できるぶん、情報の伝達が速く、伝達できる情報量も豊富である。相手方も同じ条件であるならば、有益な情報を素早く伝達したチームが勝機を得ることになろう。
視点3.クラン戦では事前の打ち合わせや練習ができる。「以心伝心の作戦行動!」
パブリックサーバーでは、毎回異なるメンバーとその場で連携をとる必要があるため、事前の打ち合わせができないが、クラン戦は事前に細かい作戦について打ち合わせや練習が可能である。戦闘の現場で作戦行動を逐一説明していたのでは、時間が足りないうえ、機動力に欠く。複雑な作戦行動については、事前に取り決めをしておき、メンバー内で共通の認識を確立しておく。そうすれば、現場では、「あの作戦で行こう」と作戦名を言うだけで、以心伝心の作戦行動が可能となる。
守備の基本
以上の基本視点を押さえたうえで、それを守備にどう生かすかについて見ていこう。
ポイントは以下の通りだ。
1.ボムサイトへの経路を漏れなく守れ
爆破ミッションでは通常2つのボムサイトがあるが、この2つのボムサイトへと続く経路を漏れなく監視できるような陣形を維持することが重要である。「気づかないうちに敵にC4を設置されていた。」なんてことはあってはならない。以下に具体例を挙げよう。

上の図1では、茶色で示した経路に隙があるため、気づかないうちにBサイトに設置されるおそれがある。したがって、これは良い布陣とは言えない。
2.互いに視界をカバーしあうことでそれぞれの集中力を高める
また、図1の布陣にはそれ以外にも重大な欠点がある。敵が広場へと抜けてしまうと、守備4と守備5が背後から攻撃される可能性があるということだ。さらに、Bサイトを制圧されたのちは、守備1の背中も危険である。このように、背後から攻撃される可能性がある布陣では集中して前方を守ることができない。では布陣を以下のように改良してみよう。

図2では守備1を前進させ、敵が広場へと出ないように監視させている。それによって、守備4,5は安心して前方に集中できるようになった。この布陣だとそれぞれが前方にのみ注意を向ければよいので、個人の集中力が増し、個人レベルでも隙が生じにくいより強固な守りが可能となる。距離は離れていても、お互いがお互いの背中を守りあっている状態と言える。このように他のメンバーとの相互関係をも考慮して布陣を組むことが重要である。
3.キャンプ戦術で堅固な守備を
1チームあたりの人数の少なく、また、分散して多くの経路を監視しなければならない守備においては、1つのポイントを一人きりで守らなくてはならない場合が多い。それに対し、攻撃チームは1点に多数の戦力を投じて、1点突破を狙ってくる。したがって、クラン戦の守備側というのは、それぞれのポイントにおいては、どうしても多勢に無勢の状況に置かれることになる。このような不利な状況を乗り切るためには、キャンプ戦術を有効に活用することが重要だ。数で有利な攻撃チームにも2つの弱点がある。それは攻撃チームの行動の読みやすさと、守備チームの行動の読みにくさである。

攻撃チームには時間切れになる前にボムサイトにC4を設置しなければならないという「弱み」がある。言い換えるならば、攻撃側にはボムサイトに向かって進んでいくという「行動パターン」があるということだ。キャンプ戦術ではこれを利用する。図3において、赤の攻撃チームがAに向かおうとしている場合、必ず青丸のポイントを通過しなければならない。したがって、守備1は青丸のポイントに照準を合わせて待っておけばよい。一方、攻撃チームのほうはどこに守備が潜んでいるかは分からないため、曲がり角を越えるにあたって、4つのポイントをクリアリングする必要がある。出会い頭の一瞬の撃ち合いにおいて、どちらが有利であるかは言うまでもなかろう。
良いキャンプには「相手の行動を予測すること」と「相手にキャンプ場所を予測させないこと」の両方が必要である。いつもお決まりのキャンプポイントでは、キャンプ戦術の有効性が半減することに注意したい。
4.命を大事に、ヒットアンドアウェイで防衛ラインを引き直す
以上で見てきたように、守備においては、メンバー一人が果たす役割は大きく、たった一人の損失でも、チームにとっては大きな痛手となる。守備における最も重要なセオリーは「しつこく、生き延びろ」というものである。

図4では、多数の攻撃チームが倉庫に侵入しており、守備1と守備3は苦しい状況に追い込まれている。この場合、守備1および守備3は無理にこの場にとどまる必要はない。
一人でも敵が倒せれば十分と考えて、次のように防衛ラインを引き直せばよい。

図5では守備1および守備3が少し後退しているものの、すべての経路を漏れなく監視できているので布陣としては問題がない。そして、この場合、攻撃チームが前進するためには、先の読めない通路を一つ一つクリアリングしていかなければならない。敵のクリアリングポイントが増える分、守備側が有利になるのだ。例え負傷したとしても、生きている限りは銃を撃つことができる。その意味では負傷することはチームにとっては損失ではない。しかし、倒されてしまえばそれまでだ。守備において粘り強さとは一つの場所に固執することではなく、経路に漏れが出ない範囲で、何度でも引き下がることである。何度も引き下がりながら、一人何役も演じることで、5人のチームが10人や15人分の脅威となる。
今回の講義はここまで。クラン戦術の面白さはチェスや将棋に通じるものがある。マップ全体を盤に見立てて、全体的な視野をもって戦略を練っていく。駆け引きの奥深さは個人戦術を遙かに凌ぐ。戦場でチームを率いていくうえで、クランリーダーに求められるものは、広い視野と高い情報処理能力、独創性、敵の心を読む力である。クラン戦はFPSに単なるシューティングゲーム以上の面白さを与えてくれる。ぜひ、この楽しさを身をもって実感して欲しい。
次回は今回の内容をふまえつつ、仮想MAP01を用いて、より実戦的な守備のフォーメーションについて具体例を挙げながら、解説していこうと思う。お楽しみに!
























