松井先生のクランお悩み相談室:第4回「クランメンバーのモラルに悩んでいます……」

オンラインゲームにおけるクラン運営に関連するさまざまな悩みに答えていく「松井先生のクランお悩み相談室」。
World Cyber Games日本予選プロデュースをはじめ、様々なe-sportsイベントに携わり、自身もオンラインゲームのクランを運営している株式会社グルーブシンクの松井悠が皆さんのご相談にお答えしていきます。
第四回目となる今回は、「クランメンバーのモラル」について。

クラン運営をしていると、いろいろな悩みがでてくるものです。今回、メールをいただいたのは、漆黒の風来坊さんからのご相談、8人ほどのクランで、無料系FPSゲームをプレイされており、仲間のプレイヤーのある行為に悩んでいるそうです。

※お名前、クラン名は仮名です。

「オーバーキル」、「死体蹴り」論争はいつの時代もつきものです

「オーバーキル」とは、倒した相手、つまり反撃できない相手にさらに攻撃を加えることで、ある意味、屈辱を相手に味わわせるための行動になります。格闘ゲームでも時折話題になる「死体蹴り」(KOした相手に攻撃を加える行為)論争と似たようなものですね。

まず最初に言っておかなければならないことは「CS(Counter-Strikeの略)の世界でも死体撃ちは挨拶」ではありません。そこは間違えないようにしてくださいね。

実際にWolrd Cyber GamesやInternational E-sports Festivalなどの国際大会で私が接したプロのCounter-Strikeチームメンバーは非常に礼儀正しいですし、試合前や後には率先して挨拶をしにきますし、もちろん試合中の死体撃ちや挑発行為などは決して行いません。

さて、相談者さんは、この行動を「いやなもの」というとらえ方をされているようです。一方、やっている側の意見としては「ゲーム側で禁止されているわけじゃないんだからいいじゃないか」というものですね。

この手の議論は、正直なところ、明確な結論がありません。肯定派の言うとおり、ゲーム開発者側から明確に「オーバーキル」について禁止されているわけではありませんし、その行動によって何らかのペナルティが課せられるわけではありませんので、する、しないはユーザー側の自由である、と考えられます。

また、FPSゲームによっては「伏せ」の状態と死んでいる状態が見分けにくいため、寝ている(ように見える)敵はとりあえず撃つというプレイヤーさんもいます。ゲーム内のシングルプレイモードでは、演出として倒した敵に意図的に銃弾を撃ち込むシーンもありますし、簡単に良い・悪いで切り分けられる問題ではないでしょう。

これは私見ですが、この問題の結論から言ってしまうと、「ルールやシステムの中で、プレイヤーが何をしようが自由なので、他者はプレイ内容を強制することはできない」ということになるでしょう。今後、ゲームによっては死体撃ちに対してペナルティを与えたりすることもあるかもしれませんが……。

■海外のプロチームは、スポーツマンシップにのっとった選手が多い印象があります

「クランメンバーとどこを目指すのか?」を考えましょう

とはいっても、死体撃ちに不快感を覚える人がいるのも事実です。一方、それが「自分の中の常識」になっているため、批判を受けること自体がおかしい、と考える人がいるのも事実です。

もし、漆黒の風来坊さんのクランが「強さ=正義」と考えているのであれば、結論は一つ。死体撃ちをしようが何をしようが、大会や試合で勝利することが全てで、その手段や方法は問わない、という考え方ですね。ただ、それを続けるには外部からのクレームや試合申し込みの拒否など、様々な状況が起こり得るでしょう。しかし、そんな外部の雑音を一切気にせず、とにかく勝利至上で突き進む、というのもアリかもしれません。強さの後に付いてくるもの、というのも確かにあるわけですから。

そうでなければ、死体撃ちをしているプレイヤーに対して、自分の気持ちを改めて伝えること。そこでその人からどうしても理解を得られないようであれば、クランとしての活動も考え直す必要があるでしょう。ただし、その考えを伝える際は、なるべく、クランメンバー複数人が彼に対して意見するような、いわゆる「つるし上げ」にならないように、クランリーダーと、漆黒の風来坊さんと、彼の3人で話し合うスタイルがいいのでは。
ただ、伝える際には「○○さんが不快だって言っているから」ではなく「自分はこう思っている」と伝えると誤解が少なくてすむと思います。また、文字のチャットではどうしてもお互いにディスコミュニケーションが発生しがちです。できれば、実際に会った機会に話をするか、ボイスチャットなどを使用できるといいですね。

私見ではありますが、オンラインゲーム、特に対戦ゲームは2チームいれば、1チームは勝者、1チームは敗者となります。そして、当然ですが、自分が楽しんでいるゲームも「対戦相手があってこそゲームが成立する」わけです。相手への尊敬を忘れずにプレイすることを考えれば、自ずとその気持ちはプレイスタイルの中に表れてくることでしょう(まぁ、「俺の死体撃ちは相手への尊敬の念だ」なんて言われてしまえばそれまでですけれども……)。

いずれにせよ、楽しいはずのゲームをプレイしているところで、こういった悩みを持ち続けてしまうと、だんだんゲームを立ち上げるのがおっくうになってしまいますよね。どちらかの結論を出す前に、まずは、仲のよいクランメンバーや、クランリーダーに、しっかりと相談をしてみてはいかがでしょうか?

仲間達とわいわいと楽しむのもクランの醍醐味のひとつです(写真はイメージです)

真剣に強さを追い求めて国際大会を目指すのもアリでしょう(写真はイメージです)

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松井悠(まつい・ゆう)
株式会社グルーブシンク代表取締役。某対戦格闘ゲーム日本一になった後、ゲームイベントやクラブイベントの運営を多数行い、現在は世界最大のe-sportsイベントWorld Cyber Gamesや、International E-sports Festivalの日本プロデューサーを務める。日本におけるe-sportsの可能性を模索するため、IGDA日本デジタルゲーム競技研究会を発足した。なお、自身も2003年より、オンラインゲームクラン「teamStrayDogs」を立ち上げ、現在も様々なゲームで活動を行っている。

■野良犬雑記
http://d.hatena.ne.jp/Y_Matsui/

■IGDA日本デジタルゲーム競技研究会
http://igdajapan-esports.blogspot.com/

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