
クランお悩み相談室:第16回「e-sportsって何なんですか?」

オンラインゲームにおけるクラン運営に関連するさまざまな悩みに答えていく「松井先生のクランお悩み相談室」。
様々なe-sportsイベントに携わり、自身もオンラインゲームのクランを運営している株式会社グルーブシンクの松井悠が皆さんのご相談にお答えしていきます。第16回目は、最近話題のe-sportsについて、松井先生に質問が寄せられました。

「デジタルゲームを競技として捉えるカルチャー」それがe-sportsです。
さて、まずは「e-sports(electronic sports)とは何か」というお話ですが、これは、いまのところきっちりとした定義があるわけではありません。私はデジタルゲームを競技として捉える概念をe-sportsとしています。Counter-Strikeや、StarCraftがe-sportsなのではなく、それらのタイトルを使い、ルールを整備し、競技として成立していれば、それはe-sportsになります。ぶっちゃけて言うと、いわば「e-sportsと名乗ればそれはそれでe-sportsだ」とも言えるでしょう。今の日本の現状では、マーケティング的に有用であると判断されたときにのみ使われる傾向があるようです。
つまり、Counter-Strikeがe-sportsなのではなく、Counter-Strikeの遊びの志向の一つがe-sportsなのです。
「遊ぶ」、「聞く」、「観る」、「着る」など、ゲームの多様な楽しみ方の中の一つとして「競う」e-sportsがある、といえばわかりやすいかもしれませんね。
日本では、ゲームに限らずサブカルチャーシーンに対して冷たい目を向ける方が多いことや、「スポーツ=体育」というイメージを持っている方が多いため、なかなかこの概念が理解されにくいようですが、まずはプレイヤーの皆さんがたが「e-sportsとは何か」をしっかりと理解した上で周りの人々への認知普及を求めていく必要があります。
ここらへんの詳しい内容は、私が執筆した「デジタルゲームの教科書」の第15章にまとめています。現在、オフィシャルサイトでは、15章のみPDF版を無料配信しています。書籍版やiPad版も発売されていますので、いままでの相談者の皆さんはできるだけ両方とも買ってくださいね。
デジタルゲームの教科書
http://www.s-dogs.jp/dgame/index.html

e-sportsというと、こういうシーンをイメージされる方も多いですが、デジタルゲームを競技として捉える方向性、そして主催者の宣言があれば、それはe-sportsといえるわけです。「この大会はe-sportsか否か」といった議論は些末なものでしかありません。

FPSゲームや、RTSだけではなく、MMORPGでもe-sportsの大会は開催されています。競技が成立するのであれば、ジャンルは問わない、というのが世界のスタンダードな考え方です

現在、「デジタルゲームの教科書」を使用したUstreamラジオを現在放送しています。興味のある方はオフィシャルサイトをチェックしてみてください。
プロゲーマーとe-sportsを混同しないように!
さて、ここで一つ申し上げておきたいのは「e-sports競技者=プロゲーマー」ではない、ということです。
まずは、下の図を見てください。これは、e-sportsコミュニティの概念図をまとめたものです(上位が優れている、というわけではありませんので注意してください)。

ゲームプレイヤーの中で、もっとも多いといわれているのが、カジュアルゲーマーです。ニンテンドーDSやWiiといったハードを所有し、ライトな遊び方をしている人たちですね。そして、コアゲーマー。毎日ゲームを遊び、オンラインでのゲームプレイもさっくりと遊べてしまう人たち。そして、e-sportsアスリートは、e-sports大会に積極的に参加する、いわゆる競技者としてのゲームプレイヤーとなります。さらに、その中の一握りが、いわゆるプロゲーマー(職業的ゲーマー)となっています。
実際に、世界でゲーマーがどのくらいいるのかについては諸説ありますが、ニンテンドーDSの世界累計売り上げが1億台を突破していますから(任天堂プレスリリースより)、おおむねその前後の数値であると推測されます。
プロゲーマーについての詳細は、また改めて別の機会に紹介しますが、e-sportsとプロゲーマーの総人口については、世界でおおよそ150万人といわれています(World Cyber Gamesが世界各国での予選参加人数を150万人と発表しています)。
その中で、プロゲーマーとして活動しているのは、おおよそ500名程度(うち、韓国のプロゲーマーライセンス保有者は400人弱)で、さらにそこからプロゲーマーとしての活動のみで生計を立てているプレイヤーはもっと少なくなるでしょう。
日本でe-sportsをもっと推し進めていくためには?
それでは、日本でe-sportsが流行していくためには何が必要なのでしょうか。
これは、昔からいろいろと言われていることですが、例えば「e-sportsのTV番組が必要だ」とか「カワイイ女の子プレイヤーが必要だ」とか、「練習環境が必要だ」、「賞金トーナメントが必要」、「ゲームメーカーの協力が必要」、「スポンサー企業が必要」、「e-sports競技タイトルが必要」、「統括競技団体が必要」とか、数え上げればキリがないわけです。まずは、プレイヤーの皆さんが、できるところから、少しずつやっていくことが大事です。遠回りのようでいて、それが近道なのですから。当たり前の話ですがe-sportsが徐々に盛り上がってきて、お金のニオイがするようになれば、大人がわらわらと群がってきますし、女のニオイがすればいわゆるフツーの若者も集まってくるでしょう。そういったレベルにまで到達できれば、今のe-sportsシーンとはまた違った何かが生まれてきているのかもしれませんね。

確かに今の日本のe-sportsシーンにはいろいろと足りないものがありますが、とりあえずは「やれる人がやれるところからやりましょう」というところでしょうか。

今では参加者1万人以上を越える世界最大のLANパーティー、Dreamhackも、最初は数十人の参加者から始まったのは有名な話。コミュニティはいつだって壁をぶち破るパワーを秘めています。

プロフィール
松井悠(まつい・ゆう)
株式会社グルーブシンク代表取締役。某対戦格闘ゲームで日本一になった後、ゲームイベントやクラブイベントの運営を多数行い、世界最大のe-sportsイベントWorld Cyber Gamesや、International E-sports Festivalの日本プロデューサーを務めた。日本におけるe-sportsの可能性を模索するため、IGDA日本デジタルゲーム競技研究会を発足。なお、自身も2003年より、オンラインゲームクラン「teamStrayDogs」を立ち上げ、現在も様々なゲームで活動を行っている。近著に「デジタルゲームの教科書」(ソフトバンククリエイティブ刊)。
相変わらず遊んでいるタイトルは「スーパーストリートファイターIV」(Xbox 360)。WCG2010の日本予選で実況をしたので、久しぶりに「鉄拳6」を遊んでみてはいるものの、空中にいる時間の方が長くてしょんぼり気味。
■野良犬雑記
http://d.hatena.ne.jp/Y_Matsui/
■IGDA日本デジタルゲーム競技研究会
http://igdajapan-esports.blogspot.com/
■デジタルゲームの教科書
http://www.s-dogs.jp/dgame/index.html


























